Sean Meehan牧原トシ |
| 6月27日 (1998)、New York の ABC No Rio という非営利団体のビル修復のため、東海岸の若手インプロバイザーたちが集まってベネフィットコンサートを開きました。この ABC No Rio という団体は、70年代に街の破損した空きビルにアナーキストたちが勝手に住みついて政治運動を始めたことで発足し、市の当局と建物の所有権・使用権をめぐって長い間政治的に争ってきましたが、ついに建物の使用権を勝ち取り、非営利団体としても認められ今日に至っています。政治活動・社会運動などのほかに、パンクロックのコンサートを毎週土曜日に、そして COMA という即興演奏のシリーズを毎週日曜日にやっています。あと、不規則的にパフォーマンス・アートや詩の朗読、演劇などの公演もやっている様です。使っている建物は破損がひどく、すべての面において修復が必要で、少しでもそのための資金を集めよう・・ということで、ニューヨークの若手インプロバイザーたちを中心にささやかな即興のフェスティヴァルを開いたわけです。出演者リスト(これ以外にも飛び入りや、共演者など、名前の出ていない人たちがいます): |
| Zac Fuller, Scott Moore, Rich Gross, Ken Silverman, Motoko Shimizu, Ricardo Arias, Jeff Gburek, Will Dahl, Jeff Langston, Jessica Pavone, Lisa Ludwig, Efia Greenhill, Chris Kelsey, Sean Meehan, Toshi Makihara, Chris Forsyth, Craig Flanagin, John Bollinger, Tamio Shiraishi, Phloyd Starpool, Ed Chang, Lee Ellickson, Hal Onserud, Seth Cluett, Jackson Moore, Michael Evans, Jeff Arnal, Ladislav Czernik, Matt Bua, Frank Fusco, Eric Hoffman, Bruce Gremo, Ravish Momin, Sabir Mateen, Frank Keeley, Dom Minasi, Evan Gallagher, John McDonough, Martha Colby, David First, Hans Tammen, Christoph Irmer, David Watson, Bonnie Kane, Ray Sage, Muriel Vergnaud, Blaise Siwula, Seth Dellinger, Bruce Eisenbeil・・・ 海外ではほとんど知られていない人たちですが、現在のニューヨークの新しい即興の「波」とも言える重要なパフォーマー達です。 |
| ・・で、コンサートのやりかたがものすごくて、建物の1階から4階まで、各階にて常時演奏。午後4時から11時までぶっ続け・・というものすごいプログラムでした。Free Jazz あり、ロック調あり、ヨーロッパ風あり、Drone あり、electronics あり、民族音楽風あり、パフォーマンスあり・・というわけでいろいろあって、もちろん全部観る事は不可能だったし、自分も演奏していたので、僕はほとんどのプログラムを見逃してしまったのですが、ひとつ強烈な印象が残ったのがショーン・ミーハンのパフォーマンスでした。 |
| Sean は日本にも二回ぐらい行っているし、日本でCDも録音しているので、知っている方も結構いらっしゃるかも知れません。素晴らしい打楽器奏者で、シンプルなドラムセットからあらゆる不思議な音を細かに出してゆく、まるで手品師の様に即興をやる人。「音を追う」 Paul Lovens などの方向性と 「音を待つ」小杉武久的なアプローチとが、緊迫したバランスを保っているような彼のスタイルは独特で、パワーで押すようなフリージャズ的な演奏や、ドライでコントロールを重視した現代音楽的なアプローチの両方を超えた精神性のかなたに立つ一人の「ドラマー」として、New York 即興界におけるもっとも重要な人の一人です。 |
| Sean はまず、バスーン奏者の Leslie Ross と裏庭でデュオ・・これは残念ながら観れませんでした。僕は Leslie Ross とは8月にチャドボーン関係で共演できそうなのでぜひ演奏を聴きたかったのですが、この演奏は4時に始まったため、5時過ぎにABCについた僕は観ることが出来ず、残念でした。 |
| 僕が観たのは 夜の部の Rich Gross (alto-sax, この人はギターも弾く。別頁に批評を書いた All Time Present のメンバー)とのデュオとそれに続く Ed Chang (reeds, guitar, electronics) らとのシリーズで、これは3階の小さな部屋で行われましたが、Sean はスネァドラム一台・・という楽器編成で、僕は彼のここでの演奏には本当に泣くほど感激しました。 |
| スネァドラムという楽器、あのがさつな音を出す楽器一台で即興をやる・・ということは、ものすごいことです。・・こする、はじく、ひっかく、たたく・・といったあらゆる特殊な奏法 (extended technique) を細かく使い分け、あらゆる音を細切れで出して行く彼のスネァの演奏はそれだけで本当に素晴らしく impressive なものでしたが、技術やアイデア、特殊な奏法だけでなく、その後ろにある彼の精神性・神秘性が演奏の中からたち現れてくるようなもの凄い演奏でした。技術的な点でぶったまげたのは、たとえば「太鼓」(スネァの入っていない)から「スネァドラム」(スネァ ON の状態)への移行・・というシンプルな変換(どんなドラマーでもやること)が、彼の場合ものすごくダイナミックな音景色(soundscape) の 現れ・transformation として聴衆の目前にまじまじと現れる・・ということです。それはまるでクラシックのオーケストラのようで、スネァドラムという「太鼓」一つでここまでドラマチックな効果を出せるのか・・と唖然としてしまいました。 |
| これはこの狭い部屋の状況、つまり Sean が金属棒や竹ひご、指やブラシを使って出す、こすったりはじいたりという奏法による細かく小さな音の現れを、目前でそれこそ「目撃」するといった状況によるものであり、他のたとえば 「ステージ vs 客席」的な状況とはまったく違う経験を可能にするものなのかもしれません。かれのスネァドラム一台の演奏は、その太鼓の打面上で繰り広げられる、音宇宙の生成プロセスであったようです。 |
| その後、Sabir Mateen (alto sax) とデュオ(同じ部屋、やはりスネァ一台):Sabir Mateen のスタイルはフリージャズ色が濃いため、音量も大きく、Sean の演奏もドラムスティックによるコンベンショナルな演奏法によるものが中心でありましたが、これも凄かった。彼のスネァの演奏はパワフルで「滝」のようでした。Sabir のサックスが「水のしぶき」のように跳ね回る、その中心で滝の怒号という感じでスネァドラムをこれでもか・・という具合にたたきつづけた。30分以上集中してたたいていたと思います。ものすごくパワフルな音の存在感がありました。 |
| 彼のCDは2−3枚ありますが、とりあえず僕の持っているのを一枚: |
| Fujieda - Sato - Meehan : IMPROVISATIONS / October 1994
Mamoru Fujieda: computer Michihiro Sato: Tsugaru Shamisen / voice Sean G Meehan: drumset (trust: box 114 NYC 10108) |